胸郭出口症候群
病態
胸郭出口症候群とは、腕神経叢(上肢【肩~手】の運動や感覚を支配する神経)や、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が障害を受けることで、肩、腕、手のしびれや痛み、手の動かしにくさなどが出現する疾患です。肩こりとして自覚されることもあります。一般的になで肩の女性や筋肉質の男性に多く見られます。また、発症には日常生活上の動作も関与していると言われています。自覚症状が強いにも関わらず、周囲に理解されにくく、当事者が困惑することもある病気のひとつです。
症状
・肩から手にかけてのしびれ、痛み・・・つり革につかまる時、物を干す時など腕を挙げる動作で強くなります。
・血行障害・・・上肢の血行が悪くなり腕は白や青紫色になることもあります。
・筋力の低下・・・おもに握力の低下が起きます。
・筋肉の萎縮・・・手の甲や、手のひらの小指側の筋肉がやせてきます。
原因
腕神経叢と鎖骨下動静脈は、
①前斜角筋と中斜角筋の間
②鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙
③小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方
上記を走行しますが、それぞれの部位で絞めつけられたり、圧迫されることがあります。
どの部位で障害されているかによって、
①斜角筋症候群
②肋鎖症候群
③小胸筋症候群(過外転症候群)
と呼ばれ、総称して胸郭出口症候群と言います。
また、その他に頚肋(下位頚椎から出ている突起が異常に長くなっているもの)という先天的な原因もあります。
診断
胸郭出口症候群では、身体診察における検査が重要です。以下の様なテスト法を行い診断します。
テストではあえて神経や血管が圧迫されやすい体勢をとり、症状の誘発を確認します。たとえば、鎖骨下動脈の圧迫を誘発されるように首を動かした状態で深呼吸を行い、手首の橈骨(とうこつ)動脈の脈が弱くなるかどうかを確認します。
また、胸郭出口症候群では、胎生期の異残物である頚肋に関連して病気が発症していることもあります。頚肋の有無を確認するために、頚部のレントゲン写真を行うこともあります。また、頚椎疾患との鑑別のために頚椎のMRI撮影を行うことがあります。
診断
○保存療法
予防がとても大切ですが、発症した場合には保存療法が第一に選択されます。
腕を高く上げた姿勢での作業、重いリュックサックを背負う、重い物を持つような作業は極力避けます。肩甲骨が下がった猫背姿勢などは症状を誘発させてしまうので、肩甲骨周囲の筋力訓練や、姿勢の修正、装具を用いる場合もあります。
消炎鎮痛剤、血流改善剤、ビタミンB1などの投薬も行います。
○手術療法
症状が強く保存療法では改善が期待できない場合には手術を行います。
絞扼部位によって鎖骨の上、鎖骨の下、脇の下などを切開し、原因部位の切離、もしくは切除を行います。