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野球障害(肘)

野球肘とは

投球やテニス等のスローイング動作の反復によるオーバーユース(使いすぎ)での肘の障害です。
成長期(小学生~高校生)に多く発生します。
投球動作では肘の内側は牽引され、外側や後方は衝突する力が加わります。
投球フォームの不良や、投球数が多い事で、肘関節へのストレスが加わり、徐々に発症します。
重症になると肘の骨の変形や剥離骨折、疲労骨折などを起こし復帰までに半年程度かかり、将来的にも変形を引き起こすこととなります。



投球動作とは

投球動作は一般に、ワインドアップ期、コッキング期、アクセラレーション期、フォロースルー期から構成される全身運動です。
肘の痛みは、レイトコッキングからフォロースルーで見られます。
野球障害を治療していく為には、投球動作の中での問題点をみつけることが大切です。

レイトコッキング~アクセラレーション フォロースル-

子供と大人は違う

子供は小さな大人ではありません。

子供(成長期)のからだの特徴としては

1.柔らかくて未熟な骨
2.骨端線(成長軟骨)の存在
3.骨と筋肉の成長速度の違い
4.靭帯が骨より強い(靭帯損傷より剥離骨折が起こりやすい)
5.柔らかくて傷つきやすい関節軟骨

以上のような点が上げられます。
この為成長期には投球障害の発生するリスクが高いと考えられます。

野球肘の分類

内側型 投球時の肘内側にかかる牽引力によって骨や靭帯を損傷します。回内筋群や内側側副靭帯、尺骨神経が反復する牽引力によって損傷を起こします。重症化すると剥離骨折を起こします。
外側型 肘の外側の骨同士が衝突することにより骨、軟骨の損傷を起こします。進行すると損傷部の骨が欠けて関節内に遊離することもあります。
後方型 投げ終わりに牽引力により肘の後方に付着する上腕三頭筋腱の炎症や骨端線の損傷が生じたり、衝突により疲労骨折や骨の変形を起こしたりします。

症状

投球時痛 投球中・後の痛み 初期では違和感程度から生じる
圧痛 肘の内側や外側の骨を押さえると痛い
可動域制限 肘が完全に伸びきらない、深く曲げられない
腫れ 疼痛部位の腫れ

診断

  • 疼痛
  • 腫脹
  • MRI
  • 可動域制限
  • レントゲン

治療

保存療法

スローイング休止(数週~数か月)
(薬物療法)消炎鎮痛
アイシング
リハビリテーション
物理療法

  

リハビリテーション

1.医師の診断により必要であれば投球を休止し、負担を断ちます。
2.肘関節肩関節周囲や体幹・股関節をストレッチし柔軟性を向上させ、筋力を強化します。
3.レントゲンにて状態改善得られれば、シャドーピッチングにて投球フォームを修正し、肘にかかる負担軽減を図ります。
4.投球数や強度を徐々に増やしていき、可及的早期に競技復帰を目指します。

予防のための投球数制限

アメリカのメジャーリーグ機構や日本臨床スポーツ医学会より、オーバーユースによる肩や肘の障害を防ぐために投球数制限が提言されています。 以下の表と比較し投げすぎていないかチェックしてみましょう。

日本臨床スポーツ医学会が推奨している基準

練習 全力投球数
日数 時間 1日 1週間
小学生 週3回 2時間以内 50球 200球以内
中学生 週1日以上の休養 70球 350球以内
小学生 週1日以上の休養 100球 500球以内

チェックポイント

肩関節や股関節の柔軟性が乏しいと肘関節の障害のリスクが高まります。
以下の柔軟性のテストでセルフチェックをしてみましょう。


・HHD 7㎝以下か


・肩甲骨内転 40°以上か


・挙上位外旋 50°以上か


・股関節内旋確度 30°以上か


・股関節外旋角度 45°以上か

スポーツ復帰の時期や、治療内容などは医師、機能訓練士がアドバイスをしていきますので、お気軽にご相談下さい。